6.テスト

「お前って頭いいよな」
 悪友が返却されたテスト用紙を覗き込んでくる。
「そうか?」
「俺小学校以来そんな得点とったことねえよ」
 まあ確かに悪くない。
「妹と賭けてるからな。負けるわけにはいかないんだ」
 同じ学校の、しかも同じ学年に兄妹が居るとどうしても張り合ってしまう。
「ねえ。ちょっとここ教えてくんない?」
 女の子が二人、問題用紙を持って話しかけてくる。
 笑って丁寧にわかりやすく教えてあげる。
「ありがとう。先生よりわかりやすいよ」
「うん。ホントそうだよね」
「そう?二人がそう言ってくれるんなら大学は教育学部にしようかな。まだ進路 決めてないんだよね」
 微笑んで世辞を本気とも冗談ともとれる受け方をする。
  二人は笑いながら席 に戻っていった。
「お前タラシだよな」
「そうか?」
 軽く受け流して再度答案用紙を見る。 微笑が浮かぶのが自分でも分かる。うん、いい点数だ。これなら勝てるだろ う。
 敗者にはどんなペナルティをやってもらおうか。
「妹のこと考えてるだろ?」
 何でわかったんだ。
「顔が変わるの自分で気づいてるか」
 そんなに変わるだろうか頬を撫でる。
「友人として忠告するけど近親相姦なんて救いようがないから止めてくれよ」
「ぼけ。妹の裸なんていくら見ても欲情するわけないだろ」
「そんなに見てんのか?やばくね?」
 ……。
「そんなら俺にもちょっ……ぐえ」
 死ね。

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