4.俺の屍をこえてゆけ

「兄貴」
 休み時間に悪友と談笑していると後ろから声がかかる。
 振り返ると制服でしかスカートをはかない双子の妹が立っている。
「数Uの教科書」
 それを貸してくれということなんだろう。
 いつも無表情で言葉少ないやつだが、人前だとさらにエスカレートする。
 ……こいつの将来が不安だ。
 社会は顔だけで渡っては行けまい。
 行けたら行けたで 良くない道に決まっている。
 ……偏見かもしれないが。
「俺のを貸してあげるよ」
 悪友がすばやく教科書を取り出す。しかしそれに手を伸ばそうとはしない。
「賢明だ。代償になにを要求されるかわからないからな」
「ひでぇ〜」
「何の下心もないと?」
「お義兄さんて呼ばせてください!」
「あほ」

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