3.餌づけ
「兄貴ってもてるよな」
「そうか?」
「今日もクラスの娘に兄貴のこと聞かれたぞ」
箸を茄子の漬物につきさす。
お前も実はもてるぞ、とは言わない。
「気になる?」
「別に」
どうでもよさそうに答える。事実どうでもいい。
「好きな女のタイプを教えてくれってさ」
「おれより料理の上手いやつ」
鶏肉の香草焼を箸で割きながら即答する。
「嫌味?」
「なんで?」
「おれ料理できない」
目の前に広がる夕食はすべて[作・俺]だ。
「俺ができるんだからいいだろ?」
「そうなのか?」
「そうなんだ」